オムロン・スイッチオン!!

Tech-On!取材班が、オムロンのスイッチの秘密に迫る Vol.2 キャノン様編 キャノン開発担当者に聴く!どんなデジタルカメラにでも使えるスイッチを創れないか

ゲーム業界で支持されるジョイスティック内蔵用マイクロスイッチ

 業務用および家庭用ゲーム機のパーツなどを手掛ける三和電子株式会社(本社:東京都板橋区)。同社の名前は、国内外のゲーム・ファンの間では広く知れ渡っている。優れた操作感と高い信頼性を備えたジョイスティック・レバーを提供しているからだ。いまやゲーム業界で圧倒的な支持を受ける同社のジョイスティック・レバーの実現に貢献しているのがオムロンのジョイスティック内蔵用マイクロスイッチ「形V-01-3D5-A」である。1994年の誕生以来、三和電子と共同で改良を重ねながら、いまも供給を続けているロングセラー製品だ。

三和電子株式会社ホームページ

ジョイスティック内蔵用マイクロスイッチ「形V-01-3D5-A」

ジョイスティック内蔵用
マイクロスイッチ
「形V-01-3D5-A」

格闘ゲームの交換用パーツが出発点

 1982年の創業の三和電子は、大きく二つの事業を展開している。一つは、ジョイスティックや押しボタンスイッチなどのゲーム機用パーツの開発と販売、二つ目は、インターネットを通じた製品の販売である。

  様々な製品の中で同社の発展のきっかけをつくったのが、1990年代から手掛けるジョイスティック・レバーである (図1)。 当初は、ゲーム・センター向けに業務用ゲーム機の交換用パーツとして発売した。「ジョイスティック・レバーが売れ始めたのは、激しくジョイスティックを操作する格闘ゲームが登場したころです。使用頻度が高いゲーム・センターのゲーム機は、ジョイスティックの定期的な交換が欠かせません。特に操作頻度が格段に高い格闘ゲームではなおさらです。そこで、故障しにくく、交換作業がしやすい製品を開発し、交換用ジョイスティックの市場を開拓することにしました」(三和電子株式会社 営業部 武知盛正 氏)。この狙いどおり、まずゲーム・センター向けに同社のジョイスティック・レバーが売れ始めた。

ジョイスティック・レバーの優れた操作感が評判に

 この一方で、同社のジョイスティック・レバーは、格闘ゲームのブームとともに、もう一つ別の点で評判が高まっていた。それは操作したときの小気味よい感触と、激しい動きに追随しながら縦横斜め8方向のレバーの動きを確実に入力できる優れた操作感である。

 ゲーム・ファンの間でジョイスティックの操作感を意識する機運が高まってきたことから、ゲーム・センターだけでなく、さらに評判が評判を呼んで、ゲーム機メーカー自身も、同社のジョイスティック・レバーを採用し始める。その後、家庭用に販売されているゲーム・コントローラのメーカーも同社の製品を採用し始めた。「いまでは国内の業務用ゲーム機および家庭用ゲーム・コントローラに使われているジョイスティックのほぼ全数に当社製品が使われています」(武知氏)。すでにゲーム・ファンの間では、「三和電子」はジョイスティックの有名ブランドになっており、最近では海外のゲーム・ファンの間にも、その名が広がっている。

高精度のスイッチが8方向検知を実現

  市場で高い評価を受ける三和電子のジョイスティック・レバーに、1994年から一貫して使われてきたのが、オムロンのジョイスティック内蔵用マイクロスイッチ「形V-01-3D5-A」である。27.8(W)×15.9(D)×10.3(H)ミリサイズのマイクロスイッチで、操作感や動作点の位置精度が高いこととプリント基板に直接実装できるように専用はんだづけ端子としたのが特長だ (図2)。 「当時は、このサイズのマイクロスイッチでプリント基板に直づけできる製品はありませんでした」(オムロン スイッチアンドデバイス 生産統括部 業民生産部 技術グループ 前展明 氏)。

 三和電子のジョイスティック・レバーには1台当たり、4個の形V-01-3D5-Aが搭載されている。ジョイスティックの操作レバーは、ニュートラルの位置を中心に縦横斜めの4軸、計8方向に倒すことができるようになっている。この操作レバーの位置を4個のマイクロスイッチで検知するのだが、縦横の直交する2軸はそれぞれの軸上に対向して、しかも操作レバーがニュートラルの位置でスイッチのプランジャーに接触するように、スイッチを配置する。縦横方向はそれぞれのスイッチが単独でオン、斜め方向は隣り合う2個のスイッチが同時にオンするので、ジョイスティックの8方向の動きを検出できる。

図2 ジョイスティック内蔵用マイクロスイッチの構造

図2
ジョイスティック内蔵用マイクロスイッチの構造
※クリックで拡大

 
前展明氏

前展明
オムロン スイッチアンドデバイス
生産統括部
業民生産部 技術グループ

基板実装対応で操作感とメンテナンス性を同時に向上

 プリント基板に直接実装できる製品を開発したのは、ジョイスティック・レバーを機器と接続するための配線を簡単にしたいという三和電子の要望があったからだ。「従来品では、4つのマイクロスイッチのそれぞれにリード線をはんだ付けしていましたが、交換する際の作業の手間を軽減できるように1個のコネクタで接続できるようにしたいと考えました」(三和電子株式会社 技術部 大森博克 氏)。このためにプリント基板に4つのマイクロスイッチとコネクタを実装し、これらをプリント基板上で接続するようにしたスイッチユニットにすることで、メンテナンス性を高める狙いもあった。同社のジョイスティック・レバーは、工具を使わずにスイッチを実装したプリント基板と、操作レバーを分離できるようになっている (図3)。簡単な作業でスイッチ部だけが交換できるようになっているわけだ。

 プリント基板に実装できるようにしたことは、優れた操作感を実現するうえでも重要だという。「マイクロスイッチと操作レバーの相対位置がズレると、操作感を損なうだけでなく、動作不良を招く可能性もあります。このため厳密に位置を管理する必要があります。従来は、ネジでスイッチを固定していましたが、この場合はどうしても位置の精度を維持することが難しくなります」(大森氏)。

安定した動作点が優れた操作感を実現

 操作感を重視する三和電子は、同スイッチの動作特性も当初から高く評価していた。同スイッチは、操作する速度と無関係に接点が高速で移動する「スナップアクション」と呼ばれる機構を採用している。一定のところまでプランジャが押し込まれると、瞬時に接点が切り替わる。ところが、接点が動作するポイントの位置精度が低いとジョイスティックの操作感が損なわれる。「形V-01-3D5-Aは、動作点のばらつきが小さく、しかも長期にわたって安定しています。こうした高精度のマイクロスイッチは、なかなか手に入りません。微妙な操作感の変化に敏感なゲーム・ファンの要求に応えるには、このマイクロスイッチが不可欠といっても過言ではありません」(大森氏)。

editor's note

強みの融合で最強製品を創る

  操作感や信頼性に対して厳しい目を持つゲーム・ファンの間で高い評価を受けるジョイスティック・レバー。これは変化が激しいゲーム業界において、理想のジョイスティック・レバーを追求する三和電子と、スイッチに関して長年にわたって蓄積してきた経験と実績をもとに、顧客のニーズに応えるオムロンスイッチアンドデバイスのコラボレーションの賜物といえよう。

 これは、機器メーカーと部品サプライヤーがそれぞれの強みを活かして、最強の製品を創り上げた好例である。
 オムロンスイッチアンドデバイスは、次の最強製品を創出するため、常に高いレベルのスイッチづくりを目指す。

Switch ON!!

次号の予告

省エネ・節電、安心・安全ニーズに応えるオムロンスイッチの新製品の秘密に迫る。

OMRON Switch ON オムロンスイッチの秘密に迫る キーパーソンインタビュー公開中