オムロン・スイッチオン!!

Tech-On!取材班が、オムロンのスイッチの秘密に迫る Vol.1マキタ様編 マキタ開発担当者に聴く!充電式ペンインパクトドライバに無段変速機能を搭載したい

新設計の回転式変速スイッチ「形C3Y」が実現のカギ!

 電動工具の世界的な大手メーカー、マキタが2009年から発売している充電式ペンインパクトドライバ「ペンパクト」は、電気工事関係者等のプロユーザーや日曜大工等の一般ユーザーの間でも好評を博し、好調な売れ行きを見せている。
 幅広いユーザーが高く評価している特徴の一つが、作業時の微妙な力加減が反映できる無段変速機能だ。これを実現するカギとなったのが、同社とオムロン スイッチアンドデバイスが共同で開発した回転式変速スイッチ「形C3Y」である。

 オムロンの回転式変速スイッチが搭載された「ペンパクト」はこちら

オムロンの回転式変速スイッチ「形C3Y」

オムロンの回転式変速スイッチ
「形C3Y」

ユニークな特長を備えた「ペンパクト」

 インパクトドライバとは、回転方向に衝撃を与えてネジを強くしめる機能を備えた電動式ドライバである。マキタの充電式ペンインパクトドライバ「ペンパクト」(型名:TD021DS/DZ)は、高トルクの締め付けを必要としない電気工事関係のプロユーザーをターゲットとして開発した小型軽量の製品(図1)。しかも、手回しドライバとしても使えるユニークな機構を供えているのが特徴だ。

 ペンパクトは、二つの円筒状の筐体(駆動部とグリップ部)が可動機構を介して連結された構造(図2)になっており、作業状況に応じて、L字型に曲げた状態と、真っ直ぐに伸ばした状態の両方で使えるようになっている。

 ペンパクトの最初の機種(型名:TD020DS/DZ)を製品化したのは2006年である。ただし、同製品はスイッチのオン/オフと回転方向を切り替えるスイッチしか備えておらず、回転速度は一定のものだった。無段変速機能を備えた機種は、この製品の後継機として2009年に市場に投入されたものだ。
 実際に発売してみると、プロユーザーだけでなく、日曜大工等の一般ユーザーの間でも好評を博した。「販売台数は好調に推移しています。ネジの締め付けの際の微妙な力加減を可能にした無段変速機能が受けたのだと思います」(マキタ株式会社 開発技術本部 技術管理部 AT氏)。

まったく新しいコンセプトのスイッチが必要

 ペンパクトに無段変速機能を組み込むうえで一番高い障壁となったのがスイッチだった。「グリップ部には可動機構と二次電池を組み込むので、スイッチを実装できるスペースが取れなくなってしまい、従来機と同じようなスイッチを取り付けることができなくなってしまいました」(株式会社マキタ 開発技術本部 開発部 HN氏)。
 そこでモーターなどが組み込まれている駆動部にスイッチを組み込むことになった。しかし、このスペースはスイッチとして、決して十分とはいえない狭いものだった。

 スイッチの取り付け位置が変わったことで、操作方法を一から検討する必要があった。「グリップを握ったときに、親指で操作しやすい位置に操作レバーを設けることにしました。右手で操作する場合と左手で操作する場合の両方を想定して、駆動部の左右両側に操作レバーを配置することも前提にしました」(HN氏)。
 さらに、利便性を高めるために、一つのレバーを動かすだけで、回転数と正逆転を同時に操作できるようにすることも企画段階で決めた。つまり、レバーを動かす方向によって正逆転が切り替わると同時に、レバーの移動量に応じて回転数が変化する。さらにレバーから手を離すと、レバーの位置が自動的にニュートラルのポジションに戻り、回転が直ちに停止するようにする。
 だが、これだけの要件を満たせる仕組みを、既存のスイッチを使って限られた空間で実現する方法が見当たらなかった。そこで、オムロン スイッチアンドデバイスに新たなスイッチの開発を持ちかけた。

 「従来機のスイッチをベースにした直動式やシーソー式、新発想の回転式の3種類のスイッチの検討をしました。左右両方向から操作できる仕組みを実現しやすかったことに加え、何よりも狭いスペースに収納可能なコンパクトな製品にできる回転式を提案し、共同開発することになりました。」(オムロン スイッチアンドデバイス株式会社 商品開発部 業民開発グループ 保住昭宏氏)。
 ここから生まれたのが回転式変速スイッチ「形C3Y」である。

HN氏

HN
株式会社マキタ
開発技術本部 開発部

保住昭宏氏

保住昭宏
オムロン スイッチアンドデバイス株式会社
商品開発部
業民開発グループ

コンパクな中に多くの機能を盛り込む

 形C3Yは、スイッチの側面に操作レバーを備えた円筒状の回転部をもち、操作レバーに力を加えると円筒の中心を軸に回転部が回る仕組みだ。ペンパクトでは、ドライバと操作レバーの回転軸が同じ向きになるように形C3Yを配置し、駆動部の左右両側に設けた窓から操作レバーが突出するように取り付けられる(図3)

 形C3Yの内部には、モーターに供給する電源のオン/オフを制御する接点と、モーターに供給する電圧を変えて回転数を制御する電気回路が組み込まれている。
 「レバーが付いた回転部を回す方向に応じて正転と逆転が切り替わり、回す角度が大きくなるにつれてモーターに供給する電力が増えるようになっています。レバーから手を離すと中立の位置に戻り、電力を遮断すると同時に、モーターの入力端子を短絡して、電気的にブレーキをかける機構も組み込みました。スイッチを実装できるスペースが非常に狭いので、これだけの機能を盛り込むには、様々な工夫が必要でした」(保住氏)。

微妙なレバー操作をドライバの動作で実現

 形C3Yは、マキタとオムロン スイッチアンドデバイスの間で緊密にやり取りをしながら、様々な検討がなされた。「スイッチの固定方法やリード線の取り出し方、操作感触など検討した内容は多岐にわたります」(株式会社マキタ 開発技術本部 電装技術部 JN氏)。こうした中で、オムロン スイッチアンドデバイスの技術やノウハウが役に立つ機会は少なくなかった。その一つが、スイッチに内蔵されている回転数制御回路だ。
 微妙なレバー操作を確実に回転数に反映するために構成部品にも一段と厳しい条件の加工を施している。「多くのユーザーが慎重になるのが、ネジを回し始めるとき。つまり操作レバーを動かし始めたときです。ここで操作レバーのわずかな動きに応じて確実に回転数が変化するように回路を最適化してもらいました」(JN氏) (図4)

 形C3Yの回転数制御回路には、内部のプリント基板に印刷された面状の抵抗体に接触している可動接点が、レバーの操作に応じて移動するようになっている。「操作量に正比例した出力が得られるように制御回路の特性を最適化すると同時に、抵抗体の表面の平坦度を従来のものよりも高めました」(保住氏)。
 抵抗体の表面が粗いと、可動接点が移動する際にノイズが発生し、回転数が不安定になる恐れがあるからだ。「特に形C3Yの場合は、従来のものに比べて抵抗体の面積が小さいので、抵抗値の変化に対してノイズが相対的に大きくなってしまう懸念がありました。このため抵抗体の表面を一段と滑らかにしてノイズを抑える必要がありました」(保住氏)。
 

JN氏

JN
株式会社マキタ
開発技術本部 電装技術部

editor's note

顧客の新製品ニーズに新スイッチ創出で応える

 オムロン スイッチアンドデバイスはマキタの「充電式ペンインパクトドライバに無段変速機能を搭載したい」というニーズに応え、多くの課題を高い技術力と豊富な経験に基づくノウハウで、見事に回転式変速スイッチをつくりあげた。

 これは、オムロン スイッチアンドデバイスの常にニーズを追求して、顧客が満足する製品を創出するという姿勢が体現されたものである。同社は、この姿勢を実践することで、マキタの新製品を支えるキーデバイスをつくるパートナーとして、新しい付加価値製品の創出に貢献している。

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