オムロン・スイッチオン!!

オムロン・スイッチオン!!キーパーソン・インタビュー

エンドユーザーも指名するマウス用マイクロスイッチ 顧客がこだわる「感触」を部門間ネットワークで実現

Tech-On!Special 取材班

マウスの操作感触にこだわる「マニア」の間に,広くモデル名が知れ渡っているマイクロスイッチがある。オムロン スイッチアンドデバイスが提供している「形D2FC」だ。エンドユーザーが機能や操作感触を意識して購入するマウスのほとんどに,このマイクロスイッチが採用されている。形D2FCはマウスメーカーだけでなくエンドユーザーまでが高く評価する,絶妙の感触をもつマイクロスイッチだ。これは営業,開発,生産の3部門が連携した強力な「ネットワーク」から生まれた業界標準スイッチである。

中谷 邦夫氏
中谷 邦夫

オムロン スイッチアンドデバイス
業民スイッチ商品部長

 形D2FCは,マウス用に特化して開発したマイクロスイッチである。外形寸法が5.7mm(縦)×12.7mm(横)×6.5mm(高さ)と小形で,マウスのメインキーを操作したときに心地よい操作感触を提供するとともに,軽快なクリック音を発する。

図1:マウス用スイッチの「形D2FC」のシェア
図1:マウス用スイッチの
「形D2FC」のシェア
※2010年3月当社調査

 中級機および高級機と位置づけられているマウス向けスイッチの市場におけるシェアは圧倒的だ(図1)。
「現在,これらのカテゴリのマウスに組み込まれているスイッチの70%~80%は形D2FCです。」(オムロン スイッチアンドデバイス 業民スイッチ商品部長の中谷邦夫氏)。

  2003年以降は年間7000万個以上の販売実績をずっと維持している。これは形D2FCがマウス用標準スイッチとして市場で認知されていることを示している。

ニーズの根源は「感触」だった

 マウス用スイッチに求められる要件は,操作時の「感触」である。この感触がマウスメーカーにとっても,エンドユーザーにとってもきわめて重要な要素なのだ。

 「エンドユーザーが感触を重視していることは,お客様であるマウスのトップメーカーを通じて聞いた,疲れずかつ,快適に操作したいというエンドユーザーの要望からわかりました。マウスの感触は使用するスイッチで決まってしまうので,お客様は理想の感触をもったスイッチを強く求めていました。この感触の実現こそが形D2FC開発のキーファクターでした。」(同社 業民スイッチ商品部の茂木吉男氏)。

 最近では,マウスを使うヘビーユーザーの中で,「形D2FC」が話題になっている。
「マウスの性能や操作感触にこだわるマニアの方々は,マウスを分解して搭載部品などを徹底的に調べます(図2)。こうした方々の中に,形D2FCの感触を高く評価してくださる方が多数いらっしゃいました。しかも,こうした情報を,インターネットにあるマニア同士の情報交換の中で取り上げていただいたことで,評判が一気に広がりました」(茂木氏)。
実際に,インターネットを検索してみると,形D2FCに関するエンドユーザーのコメントを多数読むことができる。

顧客が理想とする「感触」イメージを共有

中村英巳氏
蔵光 靖

オムロン スイッチアンドデバイス
業民スイッチ生産部
技術グループ

 形D2FCが,エンドユーザーにまでその評判が及ぶほど高い評価を受けるようになった理由は,同社の営業部門,開発部門,生産部門が密接に連携を図りながら,それぞれが感触という市場のニーズに応えるために様々な取り組みを実行したことが大きい。

 感触のニーズを収集するのに重要な役割を担ったのが営業部門である。同社の営業部門は欧米,中国や台湾の大手マウスメーカーに密着した体制をとっている。

 その結果,顧客であるマウスの設計者が想い描く感触のイメージを十分に把握して,開発部門に速やかにフィードバックすることができた。顧客は,それぞれに感触のイメージをもっているのだが,それは抽象的で理解しづらいものだった。それをスイッチに実現させるためにはまず,顧客と共通の尺度で議論する必要があった。

 「営業部門が集めてきたお客様の感触のニーズを試行錯誤で試作サンプルに仕上げ,それでお客様と繰り返しイメージを整合しました。お客様と開発部門との間で,何度も感触のイメージを伝達・確認した営業部門は,感触をつくりあげる初期段階において非常に大きな役割を果たしたといえます。」(同社 業民生産部 技術グループ 蔵光靖氏)

 製品開発のプロセスで顧客のニーズ実現の主役はやはり,開発部門である。同社では構想段階から設計者が,試作サンプルをもって顧客に出向き,直接顧客と議論することで,感触を定量的にとらえることをやってきた。

 その結果,スイッチの感触に関与しているのはストロークと荷重で,両者の関係が顧客のこだわる感触を作り出せることを突き止めたのだった(図3)。しかし,これらを実際にスイッチの設計にどのように反映させるかが次のハードルであった。

  • vol.1 累計1億個達成 ロングセラーの秘密
  • vol.2 世界シェア80% マウス用スイッチの秘密
  • vol.3 工作機用リミットスイッチ 耐久性向上の秘密
  • vol.4 「エコロジー」の要を担う電源スイッチの秘密

vol.5 優れた防水性能を維持 タクタイル・スイッチの秘密

 

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