報酬ガバナンスの進化

これまでオムロンは企業理念に基づき、独自のコーポレート・ガバナンス強化に取り組んできました。2017 年度にはさらなる企業価値向上を目指し、役員報酬制度(取締役・執行役員を対象)を改定しました。そこで、「持続的に企業価値を向上させる役員報酬」をテーマに、取締役会議長の立石会長と昨年度まで報酬諮問委員会委員長を務めた小林社外取締役による対談を行いました。

オムロンの経営の考え方と役員報酬の位置づけ

立石当社は企業理念に基づいて、よりよい社会づくりに貢献し続けるため、持続的な企業価値の向上を目指しています。そのために10年ごとの長期ビジョンを定めて、さらに3~4年を対象とする中期経営計画、単年度での短期経営計画を策定しています。そして、これらのビジョンや経営計画を確実に実行し企業価値を向上し続けていく上で、コーポレート・ガバナンスの強化は欠かせません。中でも役員報酬は役員人事とあわせ、コーポレート・ガバナンスを支える重要な柱の一つと言えます。役員報酬には2つの目的があります。1つは、企業理念を実践する役員が長期ビジョンに果敢に挑戦し実現していくための動機づけ。2つ目は役員報酬方針等の開示を通じて持続的な企業価値の向上に取り組む決意を示し、ステークホルダーの皆さまに経営の考え方や取り組みをご理解いただくことです。

これまでの役員報酬に関する取り組み

小林当社に対しては、社外取締役就任以前よりコーポレート・ガバナンスに積極的に取り組んでいるという印象を持っていました。2013年度から社外取締役となりましたが、当社のコーポレート・ガバナンス向上への取り組みに正直驚きました。役員報酬に関しては報酬諮問委員会で審議を行い、2014年度には中期経営計画の達成をより確かなものにするため中期業績との連動性の高い報酬制度に改定しました。

立石具体的には、中期経営計画の売上高や営業利益の目標達成度に応じて支給額が変動する中期業績連動賞与の導入や業績達成条件付新株予約権の発行ですね。

小林そうです。いわゆる年度ごとの業績に連動する報酬はどこの企業でもやっていますし、様々な評価指標もあります。しかし、このように中長期を意識し、株主をはじめとするステークホルダーの期待にうまくリンクさせ、報酬の仕組みに取り入れていこうとする考え方は先駆的だったと思います。

立石報酬制度の改定によって、それまで以上に役員は中長期の目標達成に向け高い意欲で経営に取り組むことができました。残念ながら当初の目標は達成できませんでしたが、中長期視点での経営が強化されました。M&Aや積極的な成長投資はその一例と言えます。

小林取締役会での議論をみても、中長期を見据えた経営は着実に進展していると受け止めています。報酬諮問委員会では、その後も報酬制度の実効性を検証してきました。今回は2014年度に続いての改定となりますが、報酬諮問委員会として特に重視したことは、報酬体系が役員の持続的な企業価値の向上に取り組む動機づけとして機能するか、ステークホルダーにも分かりやすくより期待に沿ったものになっているか、の2点です。

立石現在、世界では技術革新が猛スピードで進み、それに伴い社会も大きく変わろうとしていますね。この変化に対しどのように社会的課題を解決していくべきか、2030年の社会の姿を見据えながら今まで以上に機動的な施策を実行することが重要です。これを具体的な形にしたのが2017年度からスタートした中期経営計画VG2.0です。報酬制度を次の段階に進化させたことは、このVG2.0を着実に推し進める力になると考えています。

報酬制度の進化はVG2.0を着実に推し進める力

2017年度改定のポイント

立石今回、報酬の構成比率を社長の場合、基本報酬:短期業績連動報酬:中長期業績連動報酬=1:1:1から1:1:1.5に変えたことは非常に画期的だと思います。上位の立場になるほど、中長期の経営により一層責任を持つべきですから。今回、上位の中長期業績連動の構成比率を拡大したことによって、それぞれの役割でなすべきことが明確になりました。これはオムロンの経営にとって意義深いです。

役員報酬制度改定の概要

役員報酬制度改定の概要

小林加えて、業績連動報酬の評価指標も重要です。業績連動には短期と中長期がありますが、当然ながら、毎期ごとに株主をはじめとするステークホルダーの期待に応える必要があります。そのため、単年度の賞与については当社の経営の根幹であるROICの評価と、単年度での成果として営業利益と当期純利益を指標としました。一方で、例えば新たな技術による新商品・サービスの創出やM&Aのように、事業や経営のイノベーションをどう起こすかといった中長期で取り組むべき課題もあります。中長期の業績連動についてはVG2.0を着実に実行するため、2020年度における売上高やEPS、ROEの目標達成度を指標に入れました。また、役員が株主と同じ視点で会社の持続的発展を目指す観点から、業績連動型の株式報酬を導入しました。

立石今回新たに、中長期業績連動報酬にサステナビリティ評価が加わりました。国連では2015年秋にSDGsが採択されましたね。オムロンが事業を通じていかに社会に貢献していくかの観点からも、サステナビリティの取り組みをさらに加速していく必要があります。

小林今回の制度改定の中でサステナビリティをどのように評価するか、客観的な指標を何にするか、かなりの議論を要しました。お手盛りになってはいけないし、客観性をどのように保つのか、一番苦心しました。第三者機関によるサステナビリティ指標に基づいて評価を行うことで、透明性が高まり説明責任を果たせると考えています。

立石オムロンが社会的課題の解決を通じて企業価値の持続的向上に本気で取り組んでいることを、サステナビリティ評価の導入からも、ステークホルダーの皆さまにご理解いただけるのではないでしょうか。

小林単年度軸はもちろん大切ですが、それ以上にこれからどのように会社を成長させていくのかを、社長を筆頭に役員がいつも念頭に置きステークホルダーの期待に応えていくことが重要です。今回の報酬制度は、2020年度にVG2020のゴールを達成し、企業価値を向上していく上で非常に有効であると考えています。

ステークホルダーの期待に応え、企業価値向上を目指す

今後の報酬制度の取り組みと想い

小林時代や経営環境に応じて報酬制度も常に進化させていく必要があります。役員の果敢な意思決定の原動力として機能しているか、またステークホルダーへの透明性・説明責任の観点から、報酬諮問委員会として引き続きレビューし改善を図っていきます。

立石コーポレート・ガバナンスの目的は、企業理念に基づき、長期ビジョンの達成を通じた持続的な企業価値の向上です。報酬制度を含むコーポレート・ガバナンスが確実に機能することにより、役員の中長期視点がさらに高まり、将来を見据えた価値創造の施策実行が加速すると確信しています。役員一丸となって、長期ビジョンの達成と企業価値のさらなる向上に挑戦していきます。

※サステナビリティ評価
Dow Jones Sustainability Indices(DJSI)に基づく評価。DJSIは長期的な株主価値向上の観点から、企業を経済・環境・社会の3つの側面で統合的に評価・選定するESGインデックス。

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