企業の利益創出とCO2排出量削減の両立に向けて
オムロンは、CO2削減ソリューションで環境経営の支援を開始しました。

Vol.2オムロン株式会社

地球温暖化の防止に向けて、現在、企業にはオフィスや店舗、工場、物流などあらゆる活動の場でCO2排出量の削減が求められています。2009年4月には省エネルギー法が改正され、これまで規制の対象外だった多くの企業にも対策が求められるなど、CO2排出量削減に対する社会からの要求はますます強くなっています。今後、持続可能な循環型社会の構築に向けた取り組みは、利益創出と同様に企業の存続をかけた経営課題になるといっても過言ではありません。

しかし、現状多くの企業では、CO2排出量削減と利益追求が相反するものとして扱われ、それぞれの取り組みに矛盾や葛藤が生じています。その原因の多くには、次のことが挙げられます。

  1. CO2排出量削減に関する投資が、収益を圧迫するコスト要因としかみなされていない。
  2. いわゆる「我慢の省エネ」はすでに実施しており、これ以上何に取り組めばよいのか分からない。
  3. 経営と現場がCO2排出量削減について目標を共有しきれず、削減がうまく進まない。

これらの解決には、たとえば次の手段が有効です。①まず、実際に自社の活動がどれだけCO2を排出しているのかを正確に把握します。製造業であれば、一つの工場や製造ライン、あるいは製品1個の生産に掛かる空調や設備のエネルギー消費量(CO2排出量)をリアルタイムに把握し「見える化」します。

②次に、見える化したデータを元に、これまで固定費としてきた空調や設備の消費電力を、製品一個の生産に掛かる変動費として捉えなおし、エネルギー消費(CO2排出)に潜むムダやムラを抽出します。

③抽出したムダやムラを削減するための運用改善や設備改善に取組みます。これにより、CO2排出量削減に向けた環境負荷低減活動と利益拡大に向けた原価低減活動を合致させることが可能となります。さらには、こうした改善活動に排出量購入などの方策を組み合わせることで、ROC(*1)を最大化するための最適なポートフォリオを作成し、収益の向上とCO2排出量削減を両立すべく、経営と現場が目標を共有することが大切です。

収益の向上とCO2の削減

当社では、これまでに5つの生産子会社で、実際に取り組みを行い、それぞれ大きな成果を上げています。

【社内実証での成果】加工組立系の製造工程で約10〜20%の改善余地を抽出
対象サイト 改善余地 実証期間中の改善率 総投資額(年間) 改善額(年間)
A社 11% 6% 1,800万 1,200万
B社 21% 7% 600万 1,450万
C社 12% 4% 100万 600万
D社 19% 14% 220万 480万
E社 10% 7% 500万 500万

家電や自動車などのスイッチやセンサーを製造する生産子会社では、2008年より、工場内の生産設備がそれぞれどのくらい電力を消費しているかを把握する「見える化」を行いました。その結果、スイッチの成型を行う生産工程(以下、成型ライン)で、定格から最も電力を消費していると思われていた成型機よりも、実際には洗浄機のほうが、消費電力の多いことが判明しました。また、消費電力を生産設備、照明、コンプレッサ、空調に分けて計測したところ、生産に必要なエネルギーである“正の電力”と、機器の始動や待機など生産時以外に発生するエネルギー“負の電力”の割合を把握することができました。この工場の成型ラインでは“正の電力”が約7割、“負の電力”が約3割であることが判明したため、これらの結果を基に“正の電力”については効率化に、“負の電力”については排除することに取り組みました。

消費電力量の見える化

“負の電力”に関しては、洗浄機の場合、成型ラインの停止中に熱風ヒーターの電源を手動で切ることや、20分以上待機している際に自動で電源が切れるようにするなどの運用改善を行い、37.4%もの消費電力を削減しました。

一方、“正の電力”に関しては、設備改善による効率化に努めました。原材料のムダ(廃材)を減らすために、プレスや成形に使う原材料をムダなく打ち抜いたり、成型可能な形に設計し直したりすることで大幅なコスト削減に成功しました。また、データに基づいて工程を見直し、成型に要する時間を35%短縮できました。この結果、1ラインあたりの生産能力が月170万個から250万個に改善し、製品100万個あたり480kWhの“正の電力”を削減できました。

また、同社では、工場内に大型ディスプレイを設置し、どの工程でどのくらいのCO2が排出されているかを現場の社員がリアルタイムに把握できる仕組みも導入しています。担当者のパソコン画面上だけでなく大型ディスプレイに表示することで、現場の社員がいつでもCO2排出量を確認できる環境を作り、現場での問題意識の共有化を図っています。

CO2排出量を大型ディスプレイに表示

このように当社では、「見える化」によるムダやムラの抽出が、データを基にした継続的な改善活動を可能とし、CO2排出量削減と原価低減の両立に繋がることを実証してきました。
現在、当社は、こうした社内実証やお客様の現場で培った知見と独自のセンシング&コントロール技術を総合的に活用し、継続的なCO2削減とコスト削減を両立する新たなソーシャルニーズへの対応を強化しています。

当社は、顧客へ提供する本質的価値に「ROCの最大化」を据え、CO2排出量削減と利益創出を同時に適えられる独自のCO2削減ソリューションの提供を通じて、低炭素社会における顧客の課題解決を支援していきます。

* ROCとは
Return on Carbon=炭素利益率の略で、営業利益をCO2排出量で割ることで求められます。いかに少ないCO2排出量で、効率的に多くの利益を生み出せたかに着目した企業の環境効率を示す指標です。低炭素社会の企業経営において、ROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)などと並ぶ評価指標になるといわれています。
ROCの向上は、企業の使命であるCO2排出量の削減と利益追求を両立させ、持続可能な循環型社会の構築に向けて企業の社会的責任を果たすことに繋がります。
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